瞑想療法メモ 29 高次の動機(メタモチベーション)
・還元主義的な心理学
フロイト(精神分析)・マルクス(経済学的心理学)・進化心理学においては、高次の動機は、性・経済・生存本能などの基本的な要素に還元できるとする。
・人間の発達を重視する心理学
ロジャーズ(来談者中心療法)・ウィルバー(統合心理学)においては、人間の動機は「自己実現」や「自己超越」に向かう力によって導かれるとする。
フロイト:「すべての高次の動機は、無意識の性的欲求に由来する」
マルクス:「人間の行動は、基本的に経済的な要因(社会的な立場や財産の有無)によって決まる」
進化心理学:「人間の行動は、進化的に生存のために有利なものが選択されてきた結果である」
ロジャーズ(1959):「人間には、生まれつき『自己実現』へ向かおうとする基本的な動機がある」
ウィルバー(1999):「自己超越への欲求こそが、最も根本的な人間の動機である」
●還元的思考が自然科学的思考の中心になるのはやむを得ないであろう。それはそれだ。
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高次の動機(メタモチベーション)を無視することの問題
瞑想的心理学によれば、アブラハム・マズローが「メタモチベーション」と呼んだ高次の動機(自己実現・自己超越・無私の奉仕など)は、人間の本質の一部であるとされています。そのため、これらの動機を無視すると、以下の3つの大きな問題が生じます。
① 歪んだ自己イメージ
私たちは、自己イメージ(自分がどんな人間かという考え)を持っていますが、これは自己実現の可能性を狭めることがあります。
「自分はダメな人間だ」と思えば、本当にそうなってしまう(自己成就予言)
ゴードン・オールポート(1964):「人間について低い評価をすると、本当に人間の価値が下がってしまう」
② 精神的な空虚感と満たされない人生
もし「メタモチベーション」が本質的に重要なものであるなら、それを無視すると「心の栄養不足」になります。
人は「善」「真実」「美しさ」を求めなければ、心が健康に育たない
思いやりや愛を表現しなければ、人生を充実させることはできない
メタモチベーションを無視すると、自分の不満の本当の原因が分からなくなる
その結果、不満の原因を「環境」や「他人のせい」にしてしまう
これが積み重なると、マズロー(1971)が「メタ病理(メタパソロジー)」と呼んだ問題が発生する
価値観の喪失
人生の意味の喪失
冷笑主義(シニシズム)
他人への不信感
社会との疎外感(アリエネーション)
マズローは、これらのメタ病理が西洋社会に蔓延しており、文化にとって大きな脅威であると警告しました。
③ 幸福を誤ったものに求めてしまう
高次の動機を見失うと、人は「お金・性・名声・権力」といったものだけが幸福につながると考えてしまいます。
しかし、この考えには大きな問題があります。
「もっとお金を稼げば、もっと幸せになれる」と考えるが、実際には幸福感は増えない
一度満たされると、さらに大きな刺激を求める(ヘドニック・トレッドミル現象)
ブッダ:「雨が金に変わっても、人の欲望は満たされない」
このように、誤った幸福の追求は、本当に重要なことから私たちを遠ざけてしまうのです。
基本的な生活のニーズが満たされた後は、収入や所有物が増えても幸福度はほとんど向上しません。
「収入が多い人が、その収入に満足する傾向はわずかにしかない」
確かにお金は貧困による苦しみを和らげることができますが、それ以上の幸福を買う力は驚くほど小さいのです。
「最も豊かな者とは、貪欲に囚われない者である」
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お金・快楽・名声を求めること自体が悪いわけではない
「これらの快楽こそが最も重要だ」または「これらだけが幸福の源だ」と信じてしまうと、人は依存(アディクション)してしまい、最終的に苦しむことになります。
瞑想的心理学は、現代文化に広まっている誤った動機(モチベーション)に関する考え方を正し、多くの人が不幸になるのを防ぐための貴重な手助けをしている